明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

  Ⅶ-96 きものの知識「十日町友禅」

ゆうきくんの言いたい放題

「十日町友禅」と言う言葉があるのかどうかは分からない。友禅染の本場(と言う言葉も適切ではないかもしれない)は京都である。そして、「加賀友禅」「東京友禅」が知られている。どちらも有名な作家を輩出し、多くの人に知られている。

 十日町市は、新潟県の小さな町である。京都や加賀(金沢)、東京(江戸)とは違って歴史的な友禅の文化のある町ではない。山懐にある十日町は雪が多い事でも知られ、地味な印象である。しかし、今日着物の世界で十日町は外せない存在である。

 元々十日町は織物の町だった。十日町のみならず、その周辺には、小千谷、塩沢、片貝と言った織物の町が散在している。

 小千谷は小千谷紬や小千谷縮、越後上布。塩沢は塩沢紬や本塩沢。片貝は片貝木綿、と言ったように着物通の人であれば誰でも知っている織物が目白押しである。 十日町は十日町紬や明石縮が織られている。いずれも普段着の着物では名の通った存在である。

 紬や綿麻織物は全国で織られてきたが、十日町を中心とする越後の織物は、その土地ならではの織物が育っている。雪と寒さを利用した小千谷縮。苧麻を利用した上布、縮。そして、長い冬の間の殖産としての織物。雪深い越後ならではの織物産業である。

 その織物産地だった十日町が今や友禅の町になっている。

 十日町で友禅染を始めたのは、昭和三十年台の後半らしい。それまでは織物で名を成していたが、染物に進出したのである。その動機は分からないが、私が京都にいた昭和五十年台には、十日町の染物が多数流れ込んでいた。

 私がお客様(小売店)の注文品を探して店の商品を見ていると、
「それは十日町もんだよ。」
と言う事を上司から言われることがあった。しかし、それが何を意味するのかは良く分からなかった。

「京友禅」「加賀友禅」「東京友禅」と言う言葉はよく聞くし、その名が記されたポスターやカレンダーも良く見かけた。しかし、「十日町友禅」と言う言葉は正式に聞く事はなかった。それでも十日町で染められた友禅は相当数出回っていた。

 私が友禅染や加賀友禅、その他の染物や織物の知識を吸収して行くうちに、十日町友禅についても大分分かったきた。気が付いたのは、京友禅や加賀友禅には高額な商品もあるが、十日町友禅には高額な商品が見当たらない事である。

 一方、十日町では
「きものの首都になろう。」
と言うスローガンの下、多くの染工房が育っていた。

 私が京都で経験したのはそこまでで、山形に戻って来てから、更に十日町とは密接にかかわり、十日町友禅の本当の姿が見えて来た。

つづく

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